2026年01月19日

【MBA】教員に聞く、授業では紹介できなかった本

慶應型ケースメソッドを中心としたKBSの授業では、白熱する議論の流れから「MBA生として読むべき一冊」や「最近面白かった本」を先生から紹介される場面があります。しかし大量の書籍や論文に触れている先生方にとっては、まだまだ紹介しきれていない「推薦したい本」があるはず。
そこで修士1年・1学期の基礎科目(必修科目)を担当された先生方に、「授業では紹介できなかった本」を、その理由と共に伺いました。MBA生が今学ぶべきこと、今後のビジネスや人生において糧になるものなど、様々な視点で紹介いただきましたので、ラインナップを紹介します。

浅川 和宏 教授が授業で紹介できなかった本

『リアライン: ディスラプションを超える戦略と組織の再構築』

ジョナサン・トレバー(著)、安藤 貴子(翻訳)、NTTデータ経営研究所 Re:Align 研究チーム(翻訳)、池上 重輔(監修) 東洋経済新報社

 デジタル革新、パンデミックなどを経て、今日の新たな激動の時代において、企業の戦略と組織をいかに「リアライン」(Realign)―翻訳版では「再構築」と訳されているーすべきか。いわゆるパーパスと戦略と組織をいかにダイナミックに適合しうるか。こうした内容が極めて具体的、実践的なレベルで論じられています。基礎科目の授業内容の理解を更に深めたい人にとって絶好の参考書。尚、本書の著者はオックスフォード大学教授で、私(浅川)の共著者でもあります。

太田 康広 教授が授業で紹介できなかった本

『企業・市場・法』

ロナルド・H・コース(著)、宮澤 健一(訳)、後藤 晃(訳)、藤垣 芳文(訳) ちくま学芸文庫

 経営学の元になっている学問は、経済学、社会学、心理学ですが、このうち経済学は数式が多く、MBA生にとって、とっつきにくい学問だと思います。コースのこの本は、数学をまったく使うことなく、経済学的な考え方を示してくれます。第2章「企業の本質」は、取引費用の経済学という分野を開きました。組織論に対する経済学的アプローチのもとになった論文です。第5章「社会的費用の問題」は、いわゆるコースの定理のもとになった論文で、「法と経済学」という分野を切り開き、ノーベル経済学賞受賞理由となった論文です。物事の見方を変えてくれる本だと思います。

大西 浩志 准教授が授業で紹介できなかった本

『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』

森岡 毅、今西 聖貴 ダイヤモンド社


『How Brands Grow 2: Including Emerging Markets, Services, Durables, B2B and Luxury Brands』

Jenni Romaniuk, Byron Sharp Oxford University Press


『自由エネルギー原理入門: 知覚・行動・コミュニケーションの計算理論』

乾 敏郎、阪口 豊 岩波科学ライブラリー

『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』
日本のトップ・マーケター森岡氏の実践的テキスト。森岡流マーケティングのフレームワークを現実の経営課題に適用する格好の教材。頑張れば自分でもできる気分にさせてくれる!

『How Brands Grow 2: Including Emerging Markets, Services, Durables, B2B and Luxury Brands』
森岡流マーケティングの元になった、データドリブン・マーケティングの名著。マーケティング・サイエンスの手法を実務に応用するヒントを学べる。

『自由エネルギー原理入門: 知覚・行動・コミュニケーションの計算理論』
生物の知覚・行動・コミュニケーションは、「脳が自由エネルギーを最小化する」統一理論で説明できる。神経科学者カール・フリストンの理論を初学者向けに解説、機械学習などの基礎でもあるベイズ推論の事前知識があると理解しやすい。

大林 厚臣 教授が授業で紹介できなかった本

『世界史』(上) (下)

  ウィリアム・H・マクニール(著)、増田 義郎(訳)、佐々木 昭夫(訳) 中公文庫

 (経営科学の授業とは直接に関連しませんが、)グローバルに活躍するビジネスパーソンとして、世界史を通観しておきたいかたに薦めます。古代文明から二十世紀までの世界史を、これほど簡潔に幅広くまとめた書物は少ないと思います。欧米の大学で教科書として広く採用されていますが、欧米中心の史観ではなくバランスが取れています。まずこの本を読んで、さらに興味のあるところを他の本で詳しく読み進んでも良いでしょう。

大藪 毅 専任講師が授業で紹介できなかった本

『Made in America:アメリカ再生のための米日欧産業』

 M.ダートゾス(著)、R.レスター(著)、R.ソロー(著)、依田 直也 (訳) 草思社


『WORKERS』

セバスチャン・サルガド TASCHEN


『THE AMERICANS』

ロバート・フランク Steidl

 読みやすさからハードカバー1冊と写真集を2冊。
・Made in Americaは学生時代に衝撃を受けた本の一つ。アメリカというかアングロサクソンの社会科学センスのすごさを感じました。良い本は色々な読み方ができるものですが、あらためて読み返して日本再生はやはり難しいなぁと思いました。
・先日亡くなったサルガドはブラジルの元財務官僚。国際機関出向中、エコノミストとして世界の労働現場を実地調査したことをきっかけに写真家へ転身。人間知性のフィールドに職業や専門の境界はないことを教えてくれました。
・ロバート・フランクは1950年代繁栄を謳歌していた米国社会のストリートリアルを後世へ残しました。アートは社会の能動的反映であるという現代アート思想の原点となった一人。学問も時代を映しながら発展して来たのと同じ。
みなさん、学ぶことで少しずつ見えないものが見えるようになりましょう。

坂下 玄哲 教授が授業で紹介できなかった本

『マーケティングの力 -- 最重要概念・理論枠組み集』

恩蔵 直人 (早稲田大学教授)、坂下 玄哲 (慶應義塾大学教授)/編 有斐閣

 マーケティングについてより深く学びたい方に、わかりやすい教科書と難解な専門文献を橋渡しする目的で書かれた本です。修士論文執筆のヒントにもなると思いますので、興味のある方はチェックしてみて下さい。

清水 勝彦 教授が授業で紹介できなかった本

『バッテリー』(全6巻)

あさの あつこ 角川文庫

 野球小説の古典的名作。テストで使おうと一瞬思ったけれど、長いのでやめておきました。「共感が大事」「相手の立場になって考えよう」とか軽く言っている人が多いですが、まずこの本を読んでほしい。

林 高樹 教授が授業で紹介できなかった本

『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』

西内 啓 ダイヤモンド社


『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』

森岡 毅、今西 聖貴 ダイヤモンド社


『ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場』

フィリップ・デルヴス・ブロートン(著)、岩瀬 大輔(監訳・解説)、吉澤 康子(翻訳) 日経BP

 『統計学が最強の学問である [ビジネス編]』
 2010年代に話題となった西内啓氏の『最強』シリーズのビジネス編。統計学と経営学の共通領域の一冊。経営学の基礎を学んだ後に読むと良い。統計学の有用性が分かり学習意欲を高めてくれる。

『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』
 USJのV字回復を支えたとされる著者のように"数学マーケティング"を実践したい人は、この本を読むと良い。この本を理解するには、確率論をしっかり勉強する必要があることに気が付くだろう。

『ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場』
 HBSに入学したジャーナリストが、自ら体験した教育内容や学生生活の実態を記した一冊。ジャーナリストの視点で、HBS生の日常が生き生きと描かれている。実在の著名教授が登場する。色々な科目の授業内容は興味深い。MBA教育はいかにあるべきかを考えさせてくれる。

村上 裕太郎 教授が授業で紹介できなかった本

『女の一生 一部・キクの場合/二部・サチ子の場合』

遠藤周作 新潮文庫


『氷点』(上) (下)

三浦綾子 角川文庫


『続氷点』(上) (下)

三浦綾子 角川文庫

 ちょうど何の本を紹介しようか悩んでいたときに、高市早苗さんが日本初の女性総理大臣になったので、「女性」をテーマにした作品を紹介したいと思います。歴史的な瞬間を噛みしめるとともに、ここに至るまで、どれほど多くの女性たちが名もなき日々を懸命に生きてきたのだろうか、ということに想いを馳せてみてください。
 遠藤周作といえば、「沈黙」や「海と毒薬」が有名ですが、「女の一生」もそれらに負けないくらいの名作です。明治の農村に生まれたキク(一部)、昭和を生きる孫娘のサチ子(二部)。二人の人生には、華々しいドラマも、歴史を変える出来事もありません。貧困、暴力、裏切り、孤独──ただただ、理不尽な時代に翻弄され、耐え続けるだけの日々。歴史の教科書に名前が残ることもない。それでも、一人の人間が必死に生きた証がそこにある。遠藤周作は「誰にも顧みられない人生」の尊さを丁寧に描いています。
 もう一つご紹介したいのが三浦綾子の「氷点」です。「女の一生」と比較すると、家庭というよりミクロな視点で一人の女性を描いているのと、フィクション色が強いですが、読みだしたら止まらないです。ある医師の幼い娘が殺され、犯人は自殺してしまう。絶望の中、医師は妻の不貞を知る。復讐に駆られた彼が選んだのは、「犯人の娘を養女として引き取り、妻に育てさせること」。主人公の陽子が「殺人者の娘」として苦しむ姿は、キリスト教の原罪の象徴でもあります。親の罪は子に引き継がれるのか。完全に清い人間などこの世にいるのだろうか、そんなことを考えながら読んでみてください。
 どちらの本も、読んだら感想をシェアしてくださいね!

余田 拓郎 教授 が授業で紹介できなかった本

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

マックス・ヴェーバー 岩波文庫

 KBSにいる間にこういった少々固い本を読む習慣をつけておいてはいかがでしょうか。世の中の価値観が変わる中で自分自身のしっかりした考え方を身に着けてください。将来きっと役に立つことでしょう。

 最後に、今回ご協力いただいた先生方にこの場をお借りして御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

M48広報委員 市山 裕史

ナビゲーションの始まり