2026年07月15日

【MBA】2026年度 村上裕太郎ゼミ 活動報告

 

2026年6月、村上裕太郎ゼミは韓国・ソウルおよび水原にてゼミ合宿を実施しました。本年度は、デジタル広告・リテールメディア、医療ツーリズム、ロボティクス、美容医療・化粧品、コミュニティビジネス、電子産業の歴史に関わる施設見学など、多彩なプログラムが組まれました。各活動を通じ、韓国市場における起業家精神、実行速度、そして日韓をまたぐ事業展開の現場に触れることで、多くの学びを得ることができました。

A1 Media Group

はじめに、A1 Media Group社を訪問し、同社の事業内容、成長戦略、日韓をまたぐ事業展開についてお話を伺いました。

同社は、広告主向けのパフォーマンス広告事業と、ECプラットフォーム等が持つデータを活用したリテールメディア事業を展開しています。特に、同社が提供する広告プラットフォーム「SingleONE」は、複数の外部広告媒体の運用・管理を一元化し、データを活用した広告配信を可能にする仕組みです。サードパーティークッキー規制が進む中で、購買データやファーストパーティデータをどのように活用するかは、今後のデジタル広告市場において重要な論点であり、同社の取り組みについてのお話は非常に示唆に富むものでした。

また、KBSのOBでもあるジョンCEOからは、AI活用、成長戦略、米国を含むグローバル市場への展開についてもお話を伺いました。質疑を通じ、単なる広告運用能力だけでなく、データ保有者との接続、透明性の高いプラットフォーム設計、国境を越えた事業展開力が競争優位につながることを学びました。

Kiip corp.

続いて、Kiip社に伺い、パクCEOより、韓国の美容クリニックと海外患者をつなぐ医療ツーリズムプラットフォーム「iipuda」について説明を受けました。

同社は、韓国の美容医療・ウェルネス領域と海外顧客を結びつけるサービスを展開しており、通訳、クリニック紹介、予約支援、レビュー、マーケティングなどを組み合わせることで、外国人患者の利便性を高めることを目指しています。説明の中では、日本人ユーザーの獲得や、日本のクリニックとの連携、さらには韓国・中国などから日本への送客も視野に入れた構想が示されました。

韓国では美容医療への関心が高く、医療、観光、広告、テクノロジーが結びついたクロスボーダー型ビジネスとして、大きな成長可能性を感じました。同時に、医療という信頼性が強く求められる領域において、ユーザー体験、情報の透明性、言語対応をどのように設計するかが重要であることを学びました。

RACE Solution Inc.

RACE社では、イCEOより株式会社Doogの協働運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」の韓国展開について説明を受けました。

THOUZERは、LiDARによる人の動きに追従する機能や、一度教えた経路を記憶して走行する機能、反射テープを用いたライントレース機能などを備えた協働運搬ロボットです。大がかりな設備投資や複雑なマッピングを必要とせず、現場に比較的導入しやすい点が特徴であり、製造現場、物流現場、建設現場などでの活用が期待されます。

質疑応答では、複数人が交差する場合の追従精度や、屋外・悪路での利用可能性など、実際の現場導入を想定した質問が多く出ました。自動化と聞くと大規模なシステムを想像しがちですが、THOUZERの事例からは、現場の小さな負担や危険を着実に減らしていく導入しやすいロボティクスの重要性を理解することができました。

The ANTI AGING LAB

The ANTI AGING LAB社のビンCEOからは、PDRNを活用した美容医療および化粧品開発について説明を受けました。

PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)は、主にサーモンの精巣から抽出されるDNA断片です。細胞の修復や再生を促す成分として美容医療分野で注目されていますが、従来は分子量の大きさや電荷の性質上、皮膚への浸透性に課題がありました。同社は、プラズマ処理技術を用いることでこの課題を克服し、PDRNを化粧品へ応用しやすい形に改良する技術開発に取り組んでいます。

説明では、単に美容効果を訴求するだけでなく、細胞レベルでの作用や安全性を検証し、科学的根拠を積み上げようとする姿勢が強調されました。美容医療・化粧品市場ではマーケティングが先行しがちな面もありますが、同社の取り組みからは、技術的な裏付けと顧客にとっての分かりやすい価値提示の両立が、今後の差別化要因になることを学びました。

イボンジュマル

さらに、イボンジュマル社ではパク代表よりコミュニティビジネスについても説明を受けました。内容は、韓国におけるオフラインコミュニティの形成と、その後のオンライン教育・マーケティング事業への展開が中心でした。

コーヒー、小説執筆、ボーカル、ランニングなどの趣味プログラムを企画し、多くの顧客を集めた事例では、単に「学びたい」「参加したい」という表面的なニーズではなく、「家族を喜ばせたい」「仲間と挑戦したい」といった顧客の深い動機を捉えることの重要性が示されました。

特に印象的だったのは、コピーライティングの改善によって集客が大きく変化した事例です。サービス内容そのものだけでなく、顧客の不安や期待をどのような言葉で表現するかが、事業の成否を大きく左右することを学びました。これは、スタートアップや新規事業に限らず、あらゆる事業開発に通じる実践的な示唆でした。

Samsung Innovation Museum 見学

京畿道水原市では、Samsung Innovation Museumを訪問しました。同館は、電子産業の歴史と未来をテーマとする展示施設であり、電気、通信、半導体、ディスプレイ、家電など、現代社会を支える技術の発展を体系的に学ぶことができる場です。

展示を通じ、技術革新は一つの発明や製品だけで成立するものではなく、研究開発、量産、品質管理、市場形成、ブランド構築が長期にわたって積み重なることで生まれるものであることを改めて認識しました。A1 Media Group社やRACE社等で学んだプラットフォーム、データ、ロボティクスの議論を、より大きな産業史の中に位置付けることができた点でも、非常に貴重な機会となりました。

まとめ

本合宿を通じて、教室内の学習だけでは得られない実践的な学びを数多く得ました。韓国のスタートアップおよび中小企業には、実用的な現場課題を起点にしながら、マーケティング、テクノロジー、越境展開を組み合わせて事業化していく姿勢が強く感じられました。

特に印象的だったのは、いずれの事例においても、単一の製品やサービスを提供するだけではなく、顧客接点、データ、体験、信頼形成をどのように設計するかが事業成長の鍵となっていた点です。理論と実務のギャップを現場で確かめ、日韓をまたぐビジネスの可能性と難しさを具体的に理解する機会となりました。

最後になりましたが、A1 Media Groupのジョン様、Kiip corp.のパク様、RACE Solution Inc.のイ様、The ANTI AGING LABのビン様、イボンジュマルのパク様、Samsung Innovation Museumの皆様、ならびに現地におけるKBSのOBOGの皆様を始め本合宿のためにご対応ご尽力くださったすべての方々に、心より御礼申し上げます。

村上裕太郎研究室ゼミ生一同

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