2026年07月24日

2026年6月3日(水)~5日(金)、「第9回未来創造鶴岡会議 for Executives」が、山形県鶴岡市にあるイノベーションの聖地・鶴岡サイエンスパークで開催されました。
イノベーションと地域創生の事例を通じて、現代の社会・経済課題を解決し、未来を構想・設計していくための力を養うことを目的に、バイオ、AI、ビジネスの最前線を横断的に学びました。また、地域発イノベーションの本質について多角的に考察し、自らの経営観や人生観と重ね合わせながら対話を深める、非常に密度の高い貴重な機会となりました。
鶴岡から世界へと広がる地域発イノベーションを語るうえで欠かせないのが、慶應義塾大学先端生命科学研究所を長年率いてきた冨田勝名誉教授(以下、冨田氏)の思想です。冨田氏は、イノベーションを技術や資本だけで捉えず、人がどのような環境で育ち、何を価値とし、どのように人生を語り合うかを重視してきました。なかでも「じんかた ※人(じん)を語(かた)る」は、人生観を分かち合う対話の文化として、鶴岡の創造性を支える基盤となっています。
また、水田に浮かぶように建つ『スイデンテラス』は、地域資源の価値を再編集した鶴岡発イノベーションの象徴です。外から見るその美しい風景に圧倒されるとともに、この特別な場所を宿泊拠点としたことで、夜の『じんかた』をより一層、深めることができました。
2001年の先端生命科学研究所の開設当時は田畑が広がる環境でしたが、今では慶應発ベンチャーや関連機関が集積し、知の集積が産業と雇用を生み出す象徴的な場となり、日本屈指のサイエンスパークへと成長しました。冨田氏が重視する「脱優等生」「越境」「地方から世界へ」という思想は、こうした環境と響き合い、鶴岡をイノベーションが育つ場へと変えていました。
鶴岡からは、研究成果を社会実装へと結びつける多様な挑戦が生まれていました。バイオ由来の新素材開発から、地域資源を活かした観光・宿泊・教育の再編集、腸内環境研究を基盤としたヘルスケアや食への応用、発酵文化を生かした新食材の創出まで、いずれも学術知を事業へ転換されていました。共通するのは、単に技術を製品化するのではなく、地域の文化や風土を価値へ翻訳している点であり、研究と事業、伝統と革新をつなぎ、社会課題の解決を見据えた実装力を育む土壌となっていました。
冨田氏が大切にしてきた「じんかた」は、鶴岡のイノベーションを支える精神的基盤になっていました。人生観や使命感、働く意味を率直に語り合うことで信頼と共通言語が生まれる。正解主義ではなく、未知への挑戦や越境を重視し、若手に本物を任せる姿勢は鶴岡の企業群にも受け継がれていました。穏やかな自然、人の温かさ、じっくり語れる環境が、長期的な挑戦と持続的な創造を支えていました。

参加者の声(E11 野口豪さん)
テクノロジーがどこまで進化しても、人の心を動かせるのは人だけだ。鶴岡で過ごした濃密な対話と学びの中で確信に変わった。組織の中に本物の人間関係を育てることこそが、自分の果たすべき役割だと改めて腹に落ちた3日間だった。
参加者の声(E12 石川智規さん)
熱量の高い鶴岡での3日間を終え羽田に降り立った時、祭りの後の寂しさと心地よい脳の疲れが広がりました。それほど思考を疾走させ、圧倒された日々でした。「何のために働き、生きるのか」という冨田氏の問いの答えを求め、仲間との議論で思考がシェイプされる過程は刺激的でした。庄内地方のベンチャーが世界へ影響を与える現在進行形のケースを現地で味わう格別さ。「本物」の手ざわりを感じられる日々でもありました。
第9回未来創造鶴岡会議は、バイオ、AI、ビジネスを学ぶ場であると同時に、鶴岡がなぜ創造の土壌となるのかを考える機会となりました。豊かな自然、落ち着いた生活環境、地域に根ざした人間関係、挑戦を受け止める文化が、人と研究を育てていました。そこに冨田勝氏の「じんかた」が重なり、人生観や使命感を語り合う対話が挑戦を支えており、技術の先進性だけでなく、人が集い、思想が交わる環境こそが、鶴岡の最大の強みであると確信しました。
最後に、本ワークショップの実現にあたり多大なるご尽力を賜りました冨田氏、スタッフの皆さまに、改めて心より深く感謝申し上げます。
文責:E11 広報委員 奥山 理沙、
E11野口豪、E12石川智規
