イベント

モノづくりワークショップ2009 開催報告

地道な改善活動を継続していくために

2009年10月30日、慶應義塾大学日吉キャンパス協生館 藤原洋ホールにおいて、モノづくりワークショップ2009を開催しました。 当日は、企業で改善活動をリードされている方々や経営層・コンサルタント・学生など約170名のご参加を頂きました。

本ワークショップのタイトルは「地道な改善活動を継続していくために」です。このタイトルは、(1)改善活動を長期に継続することで品質・コスト・納期の大きな改善が生み出される、(2)長期継続の過程で培われた改善能力は持続的な企業競争力になりうる、(3)しかしながら経済社会の情報化・グローバル化の中での改善活動の継続は容易なことではなく、(4)改善活動を長期に継続するためには、地道な改善活動を経営成果に結びつけるリーダーシップ・改善活動を人材育成や技術力へとつなげるマネジメントの役割が必要である、との問題意識から名づけられました。

ワークショップは基調講演、パネルディスカッション、統括講義の3部構成により進められました。

基調講演

立石文雄氏(オムロン株式会社 取締役副会長)から『モノづくり企業の体質強化-中長期視点からのマネジメント-』というテーマでご講演いただきました。

オムロン株式会社のモノづくりの変遷を振り返り、直近の世界的金融危機(リーマンショック)を含めた環境下でのモノづくりの課題認識についてご紹介いただいた後、現在求められているモノづくりの方向性とその実現のためのモノづくり力強化の諸活動、そしてそれらをリードし支えるトップの役割について、具体的な事例や写真などの豊富な資料をもとにお話いただきました。

パネルディスカッション

パネルディスカッションは、「5Sと改善マネジメントについて」というテーマで、行なわれました。
最初に柿内幸夫氏(改善コンサルタンツ株式会社 常務取締役)【写真右】と松尾政明氏(ボッシュ株式会社 栃木工場工場長)のお二人から、それぞれ取り組まれている事例についてご紹介いただき、その後河野宏和(慶應義塾大学経営管理研究科教授)・坂爪裕(同 准教授)を加えた4名のパネリストでのディスカッションを行ない、最後にフロアとの意見交換を行なうという順番で進められました。

柿内氏からは『KZ法(改善全社法)-現場・現物と全社的改善を結びつける経営者参加型改善技法-』というテーマで、「現場でみんなでモノにカードを貼り、不要・不急のものを分類しながら、社長が中心になって全社的な問題を顕在化して改善へ導く手法」であるKZ法の内容と、その活動が全社的改善へとつながるプロセス・現場を巻き込む進め方・その中での経営者の役割について豊富な事例をまじえてご紹介いただきました。

松尾氏からは『ものづくりは人づくり』というテーマで、ボッシュ栃木工場で取り組まれているダントツ工場に向けての取組をご紹介いただきました。5S/6S[5S+しつこく]活動や、挨拶を含めたコミュニケーション、標準作業の維持・改善、見える化といった活動の事例や、それらの地道な活動を品質不良ゼロや人材育成、ひいては全従業員の幸せづくりへとつなげていくためのトップの役割についてお話いただきました。

その後のディスカッションでは、「5Sなどの局所的な活動をどのように全社的活動にしていくか」「トップの関与が及ぼす影響」「従業員のハートに火をつけるための工夫」「どうやってトップを動かすか」などについてパネリスト間やフロア参加者から活発な議論がなされました。

統括講義

最後に全体の締めくくりとして、基調講演とパネルディスカッションの内容を踏まえた統括講義を河野宏和教授が行ないました。

その中では、今日の講演・ディスカッションを通じて、「IT化・グローバル化という外的要因の変化の中でも、5Sのような地道な活動が大切であるというモノづくりの基本は変わらないこと」「5Sは、ありたい姿の意識による問題定義・問題発見・人づくりに役立ち、現場と経営を結びつけること」「改善活動を継続することの効果の大きさ」「トップが参画し、自らの行動をもって示すことや現場現物で考えることで、従業員のマインドに火をつけることにつながること」「改善活動を楽しむことの大切さ」といった視座を得たり、あるいは再確認することができたのではないかとの講義があり、3時間半にわたるワークショップ全体を締めくくりました。

特別協力


日刊工業新聞社