2026年02月20日

【EMBA】エーザイ株式会社 内藤晴夫CEOに特別講演を開催いただきました

 2026年1月、東京都小石川に所在するエーザイ株式会社本社において、同社CEOである内藤晴夫氏(以下、内藤氏)より、「理念経営と経営の心得」と題した特別講演を賜る貴重な機会をいただきました。

 内藤氏は慶應義塾大学商学部をご卒業され、エーザイを率い患者価値を重んじる経営を実践されています。長年にわたりグローバル市場での事業展開と研究開発の両輪を推進され、患者起点の製品設計やデータ駆動の意思決定を重視する経営哲学をお持ちです。38年間の経営に裏打ちされた直観と実証を融合させ、社会的インパクトを見据えた長期的な投資や組織改革に尽力されています。

患者を起点に未来を創る経営

 内藤氏はここ数十年で変化し続ける社会課題と業界構造の再編に的確に向き合い、そのうえで「患者起点」を経営の中核に据えることが不可欠であるという明確なビジョンを示されました。

 そのビジョンは単なる技術導入にとどまらず、組織文化を含む包括的な変革を求めるものでした。内藤氏が繰り返し強調されたのは「経営理念は短期成果で割り切れるものではない」という点です。理念は日々の意思決定や行動の基盤となるもので、トップの言動と現場の実践が一致して初めて真の浸透が達成されると語られ、理念の"骨格"は変わることがなく、「理念倒れ」にしないための継続的な仕組みづくりを具体的に提示されました。

 さらに、野中郁次郎先生の知識創造理論を経営に取り入れ、共感(エンパシー)に基づいた新たな知の創造の重要性を説かれました。患者との共感から得た知が示す方向性を組織で共有し、再現可能な戦略へと落とし込むことが組織の競争力になるという理論です。この点で、トップ自らが理念や判断の背景を言語化し、現場に理念を浸透させ仮説検証を回す知識創造理論の実践が紹介されました。

 理念浸透を「中長期的な投資」と捉える視点は、多くの参加者にとって新たな示唆となりました。理念の浸透が企業の持続的成長と社会的信頼につながるという点は、単なる説明責任だけでなく内向きの組織形成にも影響を及ぼしているのではないかと考えられます。

社会実装を見据えたイノベーション戦略とリスク管理

 内藤氏は50年後の視点から、イノベーションの社会実装(必要とする患者に届けること)は依然として大きな課題であると指摘し、軍事的リスクや紛争、社会構造の変化がイノベーションの普及に与える影響に注意を促しました。リターン、リスク、インパクトを同時に評価する重要性を説き、技術や組織改革を通じてこれらを最適化させる実務的なアプローチを示されました。

 これらは、EMBAの必修科目「ビジョナリー」での、「望ましい未来」を描き、そこから逆算するバックキャスト思考を通じて持続的な価値の創出を探るプログラムのテーマと深く関わっていました。内藤氏の講演で示された「理念の浸透」「長期投資」「患者起点×データ」といった主張は、まさにビジョナリーで私たちが問い続けているテーマであり、特に、未来を描く際に「誰に価値を届けるのか(ステークホルダー)」を明確にすること、そしてその価値実現に向けたビジネスモデルや組織設計を同時に構想することの重要性は、講義で学んだバックキャスト的アプローチと親和性が高く、EMBAプログラムの狙いと意義を改めて考える機会となりました。

実践から学ぶトップの教えと現場への示唆

 長間トップを務めてこられた内藤氏ご自身の実体験に基づく率直なエピソードは、参加者に強い説得力を与えました。経営判断の難しさや失敗から得た教訓、現場との摩擦をどう乗り越えたかなど、実務に携わる私たちにとって学びの多い内容でした。

 質疑応答では、理念の運用、AIの現場適用、長期投資の財務的説明といった具体的な論点に踏み込んだやり取りが行われ、講演後も継続的な議論が続きました。

 内藤氏の口から語られた、患者起点の発想とデータドリブンな組織設計を両輪とするビジョン、そして理念を長期投資として浸透させるための具体的な示唆は、私たちの学びにとって非常に意義深いものになり、多くの有益な視点をもたらしました。

 最後に、このように有意義な学びの場を実現することができましたのも、ひとえに運営に多大なるご尽力を賜りましたスタッフの皆さまのお力添えの賜物であり、改めまして心より深く感謝申し上げます。

文責:E11 広報委員 奥山 理沙

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