2025年11月11日
慶應義塾大学ビジネス・スクール(KBS)の劉慶紅教授による著書『統合戦略論:「倫理人」モデルで論じるTotal Value Chain』(千倉書房、2024年6月刊)(図1)が、環境経営学会2024年度学会賞(学術貢献賞)に続き(図2)、日本経営倫理学会2025年度学会賞(奨励賞)(図3)、実践経営学会2024年度学会賞(名東特別賞)を受賞しました(図4-5)。同一著書が複数の学会で評価を受けたことは、経営倫理と経営戦略を横断する学際的な研究への関心が高まっていることを示しています。
本書は、KBSの講義科目「統合戦略論」の指定テキストとしても用いられており、教育と研究の双方を結びつけた実践的な成果といえます。日本経営倫理学会は授賞理由として、「従来の経営戦略論が市場における競争優位の構築に重点を置いてきたのに対し、本書は経営倫理や社会的価値の視点を統合した戦略理論を提示している」と述べています。
これまで経営倫理は、経営学の中では周辺的な分野と見なされることが多くありました。しかし、CSRやSDGsの広がりを背景に、企業には社会的責任や倫理的行動が求められるようになっています。劉教授の「統合戦略論」は、経済的競争を重視する市場戦略に加え、社会的・倫理的な側面を重視する非市場戦略を統合的に位置づける理論であり、時代の変化に対応する新たな経営のあり方を示しています。
なお、2025年7月19日~20日に日吉キャンパス「来往舎」で開催された日本経営倫理学会第33回研究発表大会では、劉教授が実行委員会委員長を務めました。大会では、中村洋研究科長による開会挨拶ののち、「経営倫理基準としての『利他』の可能性:東洋の経営倫理思想の系譜と稲盛和夫経営哲学」をテーマとしたシンポジウムが実施され、多様な研究者や実務家による活発な議論が行われました。こうした活動を通じて、KBSでは経営倫理と経営戦略の統合をテーマとする教育・研究の深化が進められています。
