研究科委員長から
経営管理研究科
経営管理研究科は、1978年に、それまでの慶應義塾大学ビジネス・スクールの1年生教育課程を発展的に解消し、わが国初の2年制MBAコース(大学院修士課程)として設立されました。以来、慶應義塾建学以来の実学の精神のもと、ケース・メソッドによる実践的な教育を基盤として、時代に応じたビジネスリーダーの育成に努めてきました。さらに1991年には、経営に関する専門研究者養成を目的とした博士課程を併設し、今日に至っています。
本研究科では、修士課程開設以来の30余年で、約2400名のMBA(経営学修士)を社会に送り出してきました。さらに、それに先立つ9年間の1年制課程、および博士課程を含めると、合計約3000名になります。在籍者は主に20代半ばから30代後半ですが、多様なプロフィールの学生たちが互いに切磋琢磨しながら学んでいます。
いまわが国は、経済環境が混迷を深める中で、新たな経済成長のためのビジネスモデルやマネジメント・スタイルを模索しています。同時に、人々の価値観や規制環境などがめまぐるしく変化し、それらに対応するため、専門的マネジメント能力の重要性がますます高まっています。そうした中、本研究科では、「新時代において変革を先導するビジネスリーダーの輩出」という教育目標を掲げています。
これからの新時代において、変革リーダーは、経済社会や企業経営の仕組みを深く理解し、短期的な浮き沈みに近視眼的に惑わされることなく、何が変わり何が変わらないのかを見通す確かな目をもたねばなりません。さらに、未来への方向づけを責任をもって描く構想力を身につけることが、強く求められています。変化の激しい今日のビジネス環境において絶えざる変革を可能にするのは、このような見識と構想力をもったリーダーであるとわれわれは考えています。
変革リーダーを育成するために、本研究科では、基礎科目の拡充、専門科目の充実、国際的視点の充実など、毎年カリキュラムの改革を実施しています。今日のカリキュラムは、大きく分けて、基礎科目、専門科目、ゼミナールという3つの部分から構成されています。
基礎科目
基礎科目は、マネジメントに関わる主要8領域に設けられています。本研究科では、1年次にこの8科目のすべてを履修することにより、経営全般にわたる幅広いマネジメント能力を醸成することを目指しています。
これら基礎科目では、本研究科の基本的な特徴であるケース・メソッドを全面的に採用しています。ケース・メソッドでは、受講者一人一人が、様々な時期、地域、業界の具体的事例に触れ、自ら考え意思決定することにより、マネジメントに不可欠な、経営管理の基本や諸分野に関する知識を学びます。同時に、意思決定力、判断力、行動力、リーダーシップなどの基礎的な素養を体得することを目的としています。
専門科目
専門科目では、「連携」をキーワードに、様々な教育プログラムを用意しています。
連携の第一は、学界との連携です。本研究科教授陣による最先端の研究成果を基盤とし、各分野で新たに作成されたケース教材を用いることにより、本研究科の専門科目は常に各分野で最先端の学術成果を反映して構成されています。
第二は、実社会との連携です。本研究科の専門科目では、講義やケース・メソッドに加え、様々な実務家の方々による講演や演習、あるいは企業調査、顧客調査、コンサルティングなどのフィールドスタディを重視したプログラムが数多く用意しています。また、こうしたフィールドスタディに主軸をおいたフィールド科目を提供しています。
第三は、海外との連携です。海外有力ビジネススクール(2011年4月時点で29校)と国際単位交換留学プログラムの協定を結び、海外ビジネススクールからの教員招聘も行っています。国際単位交換留学プログラムによって、毎年多くの本研究科学生が海外協定校で学び、また多くの海外協定校の学生が本研究科で学んでいます。さらに2009年と2010年にそれぞれ1校ずつ、海外の有力ビジネススクールとのダブルディグリー・プログラムもスタートしています。
第四の連携は、他研究科との連携であり、既に本塾医学研究科とのジョイントディグリー・プログラムがスタートし、両研究科共通の専門科目を履修することにより、MBA取得後、最短1年で医科学修士号を取得することが可能になりました。こういった連携を今後も一層強化していく計画です。
これらの専門科目によって、各自の関心に応じた専門分野に重点をおいて、より高度な知識、技法、理論を多彩な形で学び、変革のための構想力を磨くことができます。
ゼミナール
本研究科では2年次に、担当教員1名に学生7名以下という少人数でのゼミナールが行われています。ゼミナールでは、問題を発見し、それを自ら分析し、さらには解決策を考えるまでのプロセスを深くじっくりと体験し、担当教員による指導の下1年近くの時間をかけて修士論文を執筆します。そこで身につく構想力、行動力、論理的思考、また専門分野における知識は、MBAとして卒業後に活躍する際に大切な拠り所となります。
今後に向けて
経済社会の国際化は日々進展し、このようなビジネス環境に対応できるマネジメント人材へのニーズは高まっています。グローバルに活躍できるビジネス・リーダーを育成するため、KBSのMBAプログラムでは、さらなる国際化を目指し、主に2つの方策に主眼を置いています。
一つは、海外トップレベルのビジネススクールとのダブルディグリー・プログラムです。KBSは、2009年度からはフランスのESSEC、また2010年度からはドイツのWHUとの間で、それぞれダブルディグリー・プログラムを開始しました。ダブルディグリー・プログラムでは、KBSと提携校で合わせて2年(KBSからWHUに留学する場合には2年半)学ぶことにより、両校の正規卒業生として2つのMBA学位を取得することができます。学生にとっては、必修科目が増えることに加え、語学力や異文化対応能力なども要求されるチャレンジングなプログラムですが、KBSとESSEC・WHUの双方に魅力を与えるとともに、わが国のMBA教育に新たな可能性をもたらすプログラムであると考えています。併行して、短期留学タイプの国際単位交換プログラムの拡充も進めており、提携校は30校に近づいています。さらに、アジアのトップスクールとの間で、フィールドスタディ型の新しい国際連携授業も計画しています。
もう一つは、マネジメント教育に関する国際的な第三者評価機関からの認証の取得です。KBSおよびその修了生の国際的な評価を高め、さらなるグローバル化に対応していくためには、KBSが海外のトップレベルのビジネススクールと比肩し、こうした認証を得ることは必要不可欠であると考えています。KBSは2000年に日本で初めて米国の評価機関であるAACSB Internationalからの認証を取得し、その後2回の継続認証を得ています。また、2011年には、欧州の評価機関であるEFMDから、EQUIS認証を、日本のビジネススクールでは初めて取得しました。これにより、日本で唯一、AACSBとEQUISの2つの国際認証を得たビジネススクールとして、その教育・研究活動が国際的な水準を満たしていることが確認されています。しかし、これらの認証の取得はKBSにとってのゴールではなく、継続認証を目指すことを通じてKBSのあるべき姿を考え、国際社会を先導していくビジネスリーダーを育成すべく、その教育・研究活動をレベルアップしていくことが大切であると考えています。
本研究科は、その前身である短期エグゼクティブ・セミナーを主催する慶應義塾大学ビジネス・スクールが1962年に開設されてから、2012年には創立50周年を迎えます。この間、常に慶應義塾の建学の精神である実学に重きを置き、ケースメソッドを活用しながら、実務と理論の双方に役立つ教育・研究の先端を走り、これからのビジネス社会を先導できる経営人材の輩出に努めてきました。それぞれの時代が求めるビジネスリーダー育成のため、2年制の修士課程、3年制の博士課程、社会人向けセミナーのいずれも、絶えずそのプログラムを見直し進化してきました。日本社会の先行きは明るい話題ばかりではありませんが、そうした時代においても先頭に立って変革を実現していくビジネスリーダーの輩出のため、われわれはさらに進化を続けています。
未来社会への変革リーダーを志す方々が、一人でも多く本研究科の門を叩かれることを、お待ちしています。
