2019.04.18

2018年度学位授与式 研究科委員長式辞

本日、大学院を修了されたMBAプログラム、Executive MBAプログラム(EMBA)約130名の皆様にお祝いを申し上げます。さらに皆さんをサポートしてくださったご家族の皆様、会社の方々など、関係する皆様にも心よりお祝いを申し上げたいと思います。

2年前に、MBAプログラムの皆さんは今井浜の合宿、Executive MBAプログラムの皆さんはビジョナリーの合宿と、いきなりの合宿からこの研究科のプログラムをスタートしました。果たして2年間どのような学習生活になるのかと、不安を持ちながら入学されてこられたと思います。一部の留学生にとっては慣れない生活と勉学で、様々な負担があったことと思いますが、2年間で学んだことをこれからの生活で活かして活躍して欲しいと願っています。

すでに色々な人から『卒業おめでとう』といわれていると思いますが、今日は私が皆さんに期待したいことを伝えておきたいと思います。

KBSはT型の人材、つまり専門性とジェネラリストの能力に加えて、その周辺を囲む国際感覚、人間性、志、こうしたものを身につけるための教育、研究、ネットワーク構築に努めています。まず専門性の部分ですが、修士論文や専門科目で学んだこと、EMBAにおいては個人研究などの科目で学んだことは、十分な専門性という点では実はまだスタート地点レベルだと思います。変化が激しく様々な情報が飛び交う時代であるからこそ、自分の専門性、自分が得意とするところが必要になります。皆さんがこれからの仕事を通じて問題意識を高め、専門性をもう一段深く身に付けていくことが、これからの皆さんの生活を豊かにし、充実させていくための大切なポイントだと思います。学校を卒業すると日々の仕事に追われがちですが、特に経営に関わる専門性を磨き上げて欲しいということが1点目のお願いです。

2点目のお願いは、実務的な意思決定能力を磨くことです。KBSはケースメソッドを用いて分野横断的な意思決定能力を磨いていくカリキュラムを提供していますが、学校の中での教育は、ケースでいかに実践的に学んでも、実務の一部分が切り取られているだけです。実際の社会の中では、様々な競争や人間関が渦巻いています。そういうところで判断し、意思決定しなければいけないというのが皆さんのこれからの仕事になっていきます。そういう場面で知識やスキルを使い、経験を活用し、分野横断的に意思決定し決めていく力を磨きあげて欲しいのです。授業の中に比べると現実ははるかに複雑で、その中で重大な意思決定をし、その決定に責任を持たねばなりません。背後に多くの生活がかかっていることもあると思います。ポジティブな決断だけでなく、ネガティブな意思決定をしなければならない場面でも、きちんと責任を持って決めていく、こういう力を身に付けてほしいというのが2点目のお願いです。

3つ目のお願いは、T字型人材の図の一番外側に描かれている能力についてです。すなわち国際感覚や人間性の部分です。こうした部分は大学院の課程ではなかなか教育しにくく、元々教育カリキュラムに馴染まない内容かもしれません。しかし、皆さんが組織や企業を引っ張っていくリーダーとして、あるいは意思決定をしていく立場の人間として、一番大切になるのは、皆さんの人間性であると考えます。周囲の人から彼あるいは彼女の言うことなら聞いてみたいと思わせるような、人から信頼され人がついて来てくれる人間力。そうした魅力をぜひ磨いて下さい。

学校の中では、MBAの100人弱、EMBAの40数名の仲間の中で議論をし、時には別の学年の学生、同窓生、他校の人たちと交流する機会があったと思いますが、これからは社会の中の多様な人たちと接してリーダーとして尊敬される、ついて来てくれる人にならなければなりません。常に自分を見つめ、振り返って反省し、自分の将来をよく考えながら、周りの人とコミュニケーションをとっていく。そういう中で自分に足りないところ、他の人の方が優れているところを、率直に学び真摯に自分を鍛えていく、このような人間性を身につけていって欲しいと期待しています。

MBAの学位を取得した学生は大学院で高度な学問を勉強したのだから、エリートとして社会に貢献すべきという議論があります。それは全て否定されるものではないかもしれませんが、私が生産の領域で色々な工場を研究する立場から考えてみると、国籍や文化、あるいは就業経験の異なる人たちを巻き込んで社会を変えていくことが、皆さんに期待されていることだと思います。社会を構成する人は多様であり、自分がエリートだという視線で接していては絶対について来てくれません。そうすると、専門性を自分で磨くなり、意思決定をしていくチャンスは狭く限定的になり、その中で生活するというのは非常に寂しいことだと思います。むしろ、色々な人がついて来てくれて、日本の役割や世界の中での日本の貢献を広く考えていけるような、そんな人になることを目指して欲しいのです。そのために、本日の学位授与式は、皆さんが社会生活をスタートする重要なポイントだと認識して欲しいと希望しています。

また、この学位授与式の後、KBSから卒業して離れてしまうではなく、皆さんのこれからの経験値をぜひ学校にフィードバックして下さい。KBSの発展、成長に足りないところを指摘してもらい、それを我々が取り込んでいく。半学半教で、皆さんから学びながら学校を良くしていくというのが慶應義塾の伝統なので、そういう意味で、社会に出てからもKBSを支援し、色々なアドバイスをして欲しいと希望しています。

改めて皆さんの卒業、学位に対しておめでとうと言いたいと思います。そして関係するご家族や周囲の方々にそれ以上のおめでとう、ありがとうございましたという気持ちを伝えて、研究科委員長としてのご挨拶に代えたいと思います。

2019年3月28日

慶應義塾大学大学院経営管理研究科

委員長 河野 宏和

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