2025年03月04日

KBS同窓会主催パネルディスカッション「次世代モビリティが創造する未来の地域生活」開催報告

 2025年2月7日、東京都渋谷区にて、KBS同窓会主催のパネルディスカッション「次世代モビリティが創造する未来の地域生活」が開催された。

 パネリストには、地域イノベーションが専門の慶應義塾大学SFC研究所長の飯盛義徳氏(KBS M15)、電動マイクロモビリティのシェアサービス「LUUP」を提供するLuup代表取締役CEOの岡井大輝氏、「世界中の空を利用可能にする」と掲げドローン事業を手掛けるトルビズオン代表取締役の増本衛氏、ソフトバンク子会社で自動運転バス事業で国内民間初のレベル4を実現しているBOLDLY代表取締役社長の佐治友基氏の4名。ファシリテーターは、MIKAWAYA21社外取締役や経産省プロジェクトマネージャーなどを歴任した平川健司氏が務めた。

 会場には、KBS現役生やOB・OG、モビリティ業界関係者や早稲田大学ビジネススクール現役生など約50名が集った。

 2024年度KBS同窓会は、日吉で休日に定期開催する総会やホームカミングデーに加えて、都内で平日の夜実施のイベントを強化している。これまで、2024年9月「金融ラウンドテーブル」、同年10月「ジグザグのキャリア形成(ダートマス大学Tuck同窓会との共催)」、同年11月「コロンビア大学日本同窓会との合同親睦会」を開催した。いずれも、仕事終わりに気軽に、同窓会イベントに顔を出して欲しいとの思いからだ。

金融ラウンドテーブル 詳細
Tuckとの合同キャリアイベント 詳細
コロンビア大学との合同懇親会 詳細

 今回のテーマは、「モビリティ×地方・地域創生」。

 モノづくり大国日本の代名詞であったモビリティ(自動車)業界は、米国のテスラや、中国のBYDなどをはじめ新興メーカーの台頭で、その地位が揺らいでいる。日本の全就業人口約6700万人のうち、自動車関連産業は550万人超とすそ野が広く、日本経済に与える負のインパクトは大きい。

 政治面に目を向ければ、2024年には石破茂首相が誕生した。彼は、生まれや選挙区が鳥取県であることから、かねてより地方創生を重視し、今もさまざまな政策実現に取り組む。過疎化問題などもあいまって、地方・地域創生の重要性は増し、一部でビジネスが活発化している。

 モビリティも地方創生も、激変期を迎えており、KBSの同窓が集う場で本テーマを設定する意義は大きいと考えた。

 電動キックボードや自動運転バス、空が主戦場のドローンなど多種多様なモビリティ事業者の視点をファシリテーターの平川氏がまとめあげ、さらに飯盛教授がアカデミックな視点を提供するという、パネリストによる"掛け算"が次々と繰り広げられた。

 印象的なエピソードが、LUUPとBOLDLYの掛け算。

 今日、東京都心の街中でLUUPを見かけない日はなく、とても身近なモビリティになりつつある。しかしながら、飲酒した後は、自身で運転することができないという課題がある。こうした流れを受け、BOLDLY佐治社長は、「飲んだときは、我が社の自動運転の車に、LUUPごと乗せてしまえばいいと思っている」と続けた。人間が運転するLUUPの車両と、人間が運転しないBOLDLYの車は、相反する存在ではなく"共存"する関係性であると感じた。

 終了後には、懇親会も行い、ざっくばらんに情報交換を行った。

 当日参加したKBSM46(現修士2年)の田中純也氏は、「前職は自動車関連の商社、現在は青森県で建設会社を経営し、モビリティも地方創生も自分に深く関わる。専門が異なるパネリストのクロストークは深い学びとなり、参加してよかった」と笑顔を見せた。

 本イベントを企画したKBS同窓会副会長でM27生の河野典子氏は、「人やモノに加え、喜びの"コト"を運ぶモビリティの設計は、幸せに満ちた工程であると感じ、嬉しくなった。地域や地方のモビリティは、従来のやり方では収支が合わなくとも、新価値が創造されることで持続可能なモデルができると感じた」と振り返る。

 「結局、人間は移動したいんですよ」――。

 パネルディスカッションの中で、ある登壇者はこうつぶやいた。移動したいという欲求に、どう応えていくか。モビリティの選択肢が少ない地方や地域だからこそ、勝機があると感じた。

M46 山本 興陽

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