2024年09月11日
要旨:
世界のアートマーケットは、COVID-19の影響による短期的な落ち込みはみられるものの継続して拡大し続けている(McAndrew 2021)。一方で、現代日本のアートをとりまく仕組やアートマーケットに関してはその全貌が不明瞭であり、またその独特の閉鎖性からマーケット自体の産業構造についても正確な統計データが存在しない。そこで、本研究では、日本の現代アートをとりまく状況、特に現代アートマーケットの実態を明らかにし、さらに日本の現代アートマーケットのかかえる問題を探るための一助として、すでに日本において、現代アートコレクターとしてアート作品を購入したことのある消費者をその購買動機から類型化し、そのマーケットの所在を明らかにし、ブラックボックスの一部に光を当てることを目的とする。
本研究では、Zolfagharian & Cortes(2011)で提示されたアート作品の購買モチベーションの評価フレームワークが日本の現代アートコレクターに適用可能かどうかを定性調査およびインタビュー調査にて検証したうえで、大規模な定量調査を実施し、性年齢などの属性に加えてサイコグラフィック特性やライフスタイル特性も考慮したクラスタ分析により日本の現代アートコレクター4類型(バランス調和型、オタク型、未成熟型、インテリ型)を導出した。購買行動およびサイコグラフィックス要因などから各類型の特長を検証し、また購買要因を回帰モデルで分析しアートマーケットにおける影響を考察した。