2025年05月27日
要旨: 中国では急速に高齢化社会が進行しているが、本研究は、倫理的側面および経済的備えに着目して、社会的孤立状態にある高齢者の状況について分析したものである。社会的孤立が主観的幸福度に与える影響を検証するため、本研究では、基礎モデルおよび拡張モデルを構築し、社会的孤立、健康自己評価、老後不安などの心理的な要因が主観的幸福度に及ぼす因果的関連を分析した。分析の結果、社会的孤立と健康自己評価はいずれも主観的幸福度に対して統計的に有意な影響を及ぼすことが確認され、さらに社会的孤立が高齢者における介護責任の帰属に関する意識に変容をもたらす可能性が示唆される結果となった。加えて、民間保険への加入が主観的幸福度に与える影響の分析の結果、比較的若年の個体群においては、主観的幸福度を向上させる傾向が見られたが、高年齢層に対する影響は限定的であった。以上のような知見は、老年倫理に関する研究の深化や、高齢者福祉制度の制度設計及び社会的支援体制の再構築に資する重要な示唆を提供するものといえる。
キーワード: 老年倫理、無縁社会の高齢者,社会的孤立、社会的参与,主観的幸福度